2011年10月27日木曜日

人の話を聞くこと2


前のエントリからつづく 

これは考えてみれば、今教えている本務校の学生たちだけの問題ではない。たしかに彼らのほとんどは、AO入試のような学力試験を行わない選抜によって入ってきた。私が一浪して(大して勉強はできるようにならなかったけど)紫のジャージ着てラグビーばかりやってる大学に入ったように、彼らは受験勉強というものをほとんど経験していない。学生たちの学力が相対的に低いというのは仕方が無いが、問題はそういうことではない。

自分自身を省みても、学部時代・大学院時代そして今に至るまで、最も難しいのは、人の話を理解することだと痛感している。授業や学会発表・講演などでも、人が何を言っているのかちゃんと自分に引きつけて理解し、適宜質問をする、というのは本当に難しい。先日の学会でも、日頃親しくしている後輩や友人が発表するというのに、質問者がとくにいなかったので、何とか一つでも質問できないかと頭を捻ってみたが、うまく質問することができず申し訳ないことをしてしまった。

大学院に入った頃は、公開で行われる研究科の修士論文公聴会で、せっかく先輩たちの発表を聞きに行ったのに、ずっと聞いていても、いったいなんの話だかさっぱり理解できなかったのだ。その後も数年間は、公聴会に出ても、みんな難しいことやってるんだなあ、としか思えなかった。ドイツ文学関連の論文だけでなく、専門分野外(私の出身研究科は、学際系なので様々な言語・分野を扱う院生がいた)の話でも、だいたい面白い研究か、そうでもないかくらいがわかるようになったのは、博士課程に進んでずいぶんたってからのことだった。

最近でも、学会やドイツ人の先生による講演会などでは、なかなか内容を全部聞いて理解することは難しい。学会などで、優秀だな、と思う人というのは、発表者の話を聞いて、それに対する的確な批判をするだけでなく、聴衆から見て、別の角度から発表内容をまとめることができるような質問をする人だ。(つまり、「あなたのおっしゃるのは、〜〜これこれこういうことでしょうが云々〜」という質問。それを聞いて聴衆は、「うーんなるほど」となるわけだ)そのような人が持っている「聞く力」とは何なのだろうか。


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