2012年5月8日火曜日

就活する学生たちについて

今年から出講している大学では、2年生以上のクラスを担当しているのだが、集まった学生たちは半分くらいが4年生である。

4年生にもなって初級外国語の授業に出るなど、普通の大学ならば相当なダメ学生なんじゃないかと思われるが、ここでは外国語の取得単位数がやたら多いため、殆どの学生が、3年生になっても第二外国語の授業を履修しなければならないそうだ。しかも、たいていの大学の場合、一年時に選んだ第二外国語は何が何でも単位を取らなければならず、第二外国語が取れなかったために卒業もできなくなってしまったという話をかつてはよく聞いたものだが、私のクラスの学生たちは、ほとんど中国語や韓国語の初級を履修したあと、同じ言語を中級までやるのではなく、ドイツ語に流れてきたのだ。

だから、大学新入生に初級ドイツ語を教えるのとは少し勝手が違ってくる。希望にあふれ、好奇心に満ちた1年生たちに比べて、発音や挨拶のような初歩の初歩を教える際には、彼らの表情にはやはり、すでに通ってきた道、という冷めた雰囲気が漂っている。

この大学の学生たちは、よくも悪くも普通の子たちだ。勉強ができるわけでもなく、友だちと遊び呆けたり、カロリーの高いものをたくさん食べたりしている。かつてつとめていた大学では、オタクと元いじめられっ子が大半を占めており、ギャルやヤンキー系の学生たちは肩身が狭そうだったが、ここの学生たちはちょうど真逆。活発で元気が良くて楽しそうだ。

私のクラスは男子ばかりで、悪そうな奴らはだいたい友だちみたいな子たちと、就活中でスーツ姿の子たちが大半を占めている。そして「悪そうな〜」組とスーツ組が隔週で出席しているような状況だ。今週はスーツ組が何人か出席していて、授業のあとに就活中でこれまで欠席していたことを報告しにきた。

4年にもなって出なきゃならない授業がたくさんあるという状況自体がダメダメなのだが、そんなことはおくびにも出さず、「がんばれよ」、「きっといい会社に入れるよ」と励ましの言葉をかけた自分は、教師として甘いな、と思う反面、就活中の彼らがうらやましくもあった。彼らはまだまだ内定を取れないだろうが、授業に出る暇もないほど、毎週のように選考会や面接に行けるのだ。入れる、入れないはともかく、日本中の何百もの会社の入社試験を受ける資格があるのだ。それだけでも、すごいことだ。私も求職中で、毎日教員公募情報を見ているが、たぶん年間にエントリーできる求人は10から15くらいしかないだろう。分野によっては、もっと少いこともあるだろう。

それに比べれば、毎回落とされるにしても、求人があるだけいいじゃないかと思ってしまう。どうしても横並びで、同級生みんなと同じように就活をするため、早く内定がとれなければ、自分だけがダメなんじゃないかと思ってしまうのだろうが、視野を広げて、卒業式までにどこか入れれば、くらいの気持ちでがんばってほしい。前にも書いたが、就職すること自体が、何かになることではないのだ。それはせいぜい、何かになるための手段でしかないのだから。