2013年7月21日日曜日

夏休みは映画を見よう


私はドイツ語を専門的に学ぶ学生を教えていない(いちおう京大のドイツ語IIには文学部生もいるが、どうも独文志望者ではなさそう)ので、あまり学生がドイツ語をしっかりできるようにしなければ、と思うことはない。もちろんできるようになってほしいが、やりたい学生は自分でやるだろうし、工学でも経済学でも、自分の専門についての勉強を最優先するのがいちばんだと思っている。語学などは、勉強の基礎でしかない。

だから、これまで夏休みには、課題などを指示したことは一度もない。みんな思い思いに夏休みをすごせばいい。どうせ夏休みなのだから、暑い暑いといってるあいだに、何もせずに終わってしまうのだ。せいぜい、短期バイトで文字通り汗水たらしてお金を稼いで、ちょっとばかり社会的な成功体験を得ることができるくらいだ。私だって、学生の頃は前期試験が終わったら、ほとんど勉強はしなかったし。

授業で学生たちに宿題の指示をすることはないので、ここで自分なりに宿題の提案をしておきたい。私が夏休みの宿題として考えたのは、映画を見ることだ。なんでもいいから面白いそうな映画のDVDを買って、何回か繰り返し見る。はじめから終わりまで律儀に見通す必要はなく、好きな場面、好きなセリフ、好きな女優さんが出ているところだけでも、何度も見る。不思議なことに映画というのは、よくできていて、いい映画は何回見ても楽しめる。
この夏、すでに数回繰り返して見た『コッホ先生と僕らの革命』
左はドイツで買った現地版。日本語版にはない、メイキングや
カットされたシーンも収録されている。
映画はもちろん日本語の字幕付きでいい。字幕を見ながら、それに応じたドイツ語がどこに出てきたのかが聞き取れるといい。何度か同じ場面、同じセリフを聞いているうちに、字幕に反映されていないドイツ語の単語があったことがわかる。さらに何度も聞いていると、だんだん、セリフがドイツ語の文章になって頭のなかに流れてくるようになる。

学部生の頃、フランスやドイツに出かけたが、旅行会話の本をもっていって、どのように発音するのかをイメージする手がかりになったのが、映画だった。現地で会話をするさい、映画の中のセリフを思い出し、単語は分からずとも、こんなリズムで、こんな音で、挨拶したり注文したりできたらいいのかな、と大雑把なイメージを描いたものだった。今考えると、あのころ楽しく見ていた映画は、語の発音に耳を慣らすためにちょうどよかったのだろう。

現在の私にとっても、映画は素晴らしい教材となっている。現地にいれば、テレビ番組などを長い時間見て、会話のヒントになるような表現を学ぶことができるが、日本でそれを学ぶには、映画が最適だ。同じ映画を何度も見て、見るたびに新たな発見をして、辞書を引いて表現を身につける。日本未公開の映画ももちろん、ドイツ語字幕を見たり、ドラマの場合は字幕がないことが多いので仕方ないが、場合によっては字幕なしでも見る。字幕なしで、ドイツ語をそのまま理解するのはまだ難しいが、それでも何度か繰り返し見るうちに、単語が聞き取れるようになるし、場面やストーリーの意味もよくわかってくる。

初級者には、映画の効用はわからないかもしれないが、とりあえずは勉強など忘れて、ドイツ映画を見て楽しんでほしい。この表現、なんだろう?と疑問を持つことが出来れば、それだけでもドイツ語学習のきっかけになる。

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