2012年6月18日月曜日

どんな教科書がいいのか?―備忘録として―

週に何コマもドイツ語を教えるようになって、いろいろな教科書のいいところ悪いところが徐々に見えてきた。もちろん学期が始まる前に、教科書を選ぶ段階でも、そうとう悩んでいるし、大量のサンプルに目を通している。この教科書を使えば、こういう授業ができる、こういう練習ができる、といった具合に、自分の授業のシミュレーションもしている。それでも授業は、実際に蓋を開けてみないとどうなるかわからない。
京都大学では各教員(専任も非常勤も)が自由に教科書を選んで構わない(こういう大学は珍しい方だと最近知った)のだが、自分が前年度中に、こういう学生が来てこういう授業をしようという目星をつけていても、じっさいに学期が始まらないと、担当する学部もクラスの人数も、学生たちの雰囲気も分からないのだ。

現在、ちょうど友人たちと教科書づくりを進めているので、新たな教科書に何を載せればいいのかを考えるためにも、既存の教科書の良い所・悪い所を分析して整理しておきたいと思うようになった。そこで、これまでに授業で使った教科書について、その印象や問題点などをまとめておく。


1)総合教材―会話・文法・作文・聞き取りなど―
・イメージするドイツ語(朝日出版社):使いやすい。週1時間授業のクラスにはちょうどいい。Dialogの例文はさほどむずかしくないし、毎回パートナー練習ができるようになっている点も使いやすい。難点は、付属CDのネイティブによる発音が早すぎること。あと、文法的な知識の定着を図るために、練習問題などを適宜補う必要もある。
問題点としては、コミュニケーション中心の構成となっているため、格の概念や、定冠詞・不定冠詞が出てくるのがやや遅いことが挙げられる。会話練習の課題文や練習問題などの補助教材を作る際に注意が必要。

・ぼくらの未来(朝日出版社):かなり使いにくい。DialogがDVDになっているのはいいが、いかんせん内容が難しすぎる。現地の若者の自然な会話を再現しているのかもしれないが、初めてドイツ語に触れる学生を対象にした教材としては、内容的にわかりにくい。文法事項もまとめてどっさり出てくる。授業では一ヶ月で一課ずつくらいのペースで、教科書はあまりつかわず、練習問題や会話文の教材を使ってフォローしている。


・開けごま(郁文堂):非常勤1年目に使用。仕事の依頼が来てから、3日以内に教科書を決定しなければならなかったため、指導教授に相談。先生が使っている教科書をそのまま使うことにした。授業が始まってすぐ気づいたが、とても使いにくい教科書だった。構成は、各課とも、文章・文法事項の説明・練習問題・応用問題となっていたが、冒頭の文章がやや難しかったり、文法事項の出てくる順番にかなりクセがあったりして、教える際に困った。現在は同じ著者により、改訂版が出されている。そちらはもう少し使いやすくなってるみたい。


・アプファールト(三修社):挿絵がポップで非常に可愛らしかったので、それにつられて昨年の授業で使用。教授用資料が充実している。各頁の練習を授業でどのように進めたらいいのか等作り手側の提案が収録されている。全体的に内容が豊かで使いやすいのだが、前置詞、形容詞、比較級・最上級などの項目が「付録」の扱いになっているため、後期に少し困った。週1コマずつで、一年時に初級文法を終えないクラスには向いている。



・ウニ・プラッツ(同学社):実習用の教科書として今年使用している。文法的な解説は少なく、会話練習、パートナー練習が豊富。穴埋めの文法問題や作文、短文の読解問題も含まれているので、さまざまな練習ができる。使いやすいが、やや内容が易しい。また、章ごとのDialogがすこし短すぎる。会話表現の教科書にもかかわらず、挨拶の表現の頁が設けられていないのも欠点。会話・文法・作文といろいろな要素が偏りなく詰め込まれているので、実習用の教材としてはよくできている。足りない部分は文法書や問題集で補えばOK。


・ドイツ語の時間―読解編―〈読めると楽しい!〉(朝日出版社):文章の読解力の養成を目指した教科書。2年生のクラスで使用している。読解テクストだけでなく、文法問題やオリジナル戯曲なども収録されている。出版社から送られてくる大量の補助教材を使えば、何時間でも授業ができそう。

2)初級文法―文法の解説、穴埋め問題、作文など―

・身につくドイツ文法ver.2(郁文堂):非常に使いやすい。解説の詳しさ、練習問題の難易度のバランスがいい。発展練習には、パートナー練習とドイツ語作文の問題がある。文法のクラスは講義形式で単調になりがちだが、パートナー練習で楽しい雰囲気を作ったり、作文を宿題にすることで家庭での自学自習をさせることができる。昨年に続き今年も2クラスで使っている。



・ドイツ語の時間〈話すための文法〉(朝日出版社):『身につくドイツ文法』とともに、人気・定評のある教科書。説明がわかりやすく、練習問題の量もそこそこ多いので使いやすそうだが、『身につく〜』に比べて、練習問題が易しめ。京大で使用するのであれば、もう少し骨のある問題を補う必要がある。

・岩崎・平尾・初歩ドイツ文法(同学社):学部時代から愛用している『必携ドイツ文法総まとめ』の著者による文法の教科書。解説が詳しく、これだけ分量があれば、授業で話す内容にこまることもあるまい、と思い一年目に採用。実際に使ってみると、文法事項の説明がかなり細かい、練習問題がかなり難しい、などの問題点に気づいた。もう少し私に知識や技量があれば、この教科書を有効に活かすことができたのかもしれない。

・面白いぞドイツ語文法(朝日出版社):自分の授業では使用していないが、評判がよかったので取り寄せてみた。著者は京大のドイツ語学先生なので、文法的な説明が非常に細かい。練習問題も難しめ。しかし教科書としての構成はシンプルなので、うまく取捨選択すればどのレベルの学生に対しても使いやすいのでは。巻末の文法補足は、ちょっと詳しい説明、より詳しい説明と2段階に分けられており、「より詳しい説明」のほうは、ドイツ語学者向けとでも言えるような内容。じっくり読むとこれまで知らなかったことに気付かされることもある。

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