後期の授業が始まり、早くも3週目。前期の途中ごろに書いていたものの、夏休みに旅行に行ったり、その後も世間が騒がしかったりして、ブログに載せるタイミングが遅くなってしまった。授業が始まると右肩に疲れがたまるようになる。これが板書による筋肉痛だ。たいしたことはないので、2週間くらいで慣れるが、肩のどんよりした痛みは、ああこれが自分の仕事なのだと思い出させてくれる。
ことし春の法事の際に、母親に「あなたまだチョークで黒板に書いたりしてるの?字が汚いのに大丈夫なの?」と心配された。なんで「まだ」なのだろうとその時思った。おそらく母をはじめ、一般的な感覚だと最近のオフィスの会議室のように、大学でも、もはやチョークなど使っておらず、ホワイトボードやプロジェクタが中心なんじゃないかと思われているのだろう。しかし、この業界に入ってそろそろ10年くらいだが、どの学校も相変わらず黒板が使われ続けている。最近、黒板に違いがあるように、チョークにも違いがあるのかもしれないと思い、自分の授業で使うチョークをアマゾンで発注した。後期からはチョークケースに自分の色チョークをつめて、授業ごとに持ち歩いて使っている。さて、今回は、これまでに教えてきた大学・専門学校の中から、書きやすかった黒板および書きにくかった黒板について、それらの思い出を綴ってみたい。
書きやすい黒板の判定項目
5点満点で評価。
1.摩擦力・書きやすさ:ツルツルであっても、ザラザラであっても書きやすいわけではない。今回は、ちょうどいい書きやすさを5点とした。
2.消えやすさ、消え残りのなさ:書いた文字がなかなか消えない黒板も使いにくい。
3.広さ:高さ、広さ、可動性など。
4.チョーク受け、黒板消しなどまわりのきれいさ
5.チョークの在庫、色チョークの種類など
1.京都大;4面式。上下に動かせる。表面の摩擦もちょうどいい。チョークの色が豊富。オレンジ、蛍光グリーンなど他にはない色もそろっていた。ドイツ語の非常勤講師を始めた頃は、板書の量が多くて、4面黒板が役に立った。だんだん慣れてくると、板書などしなくとも学生が理解してくれることがわかり、ほとんど黒板は使わなくなった。
1.摩擦力・書きやすさ 4
2.消えやすさ、消え残りのなさ 5
3.広さ 5
4.チョーク受け、黒板消しなどまわりのきれいさ 5
5.チョークの在庫、色チョークの種類など 5
2.龍谷大 広い黒板、摩擦力が低く小さな力で文字を書ける。私学だけに掃除も行き届いている。書きやすい反面、書いた文字が消えにくく、前の時間に使った先生の文字が残っていることがあった。私が2時間目に使用していた教室は、1時間目は知っている先生のドイツ語のクラスで、私よりも進度が早いことに気づいて焦ることがしばしばあった。
1.摩擦力・書きやすさ 5
2.消えやすさ、消え残りのなさ 3
3.広さ 5
4.チョーク受け、黒板消しなどまわりのきれいさ 5
5.チョークの在庫、色チョークの種類など 4
3.近畿大学 経営学部の21号館は可動式ではないが、十分な広さとちょうどいい抵抗。経済学部B館は、黒板がせまく、補助的に置いてあるホワイトボードもがたつきがあって、非常に不便だった。
1.摩擦力・書きやすさ 5
2.消えやすさ、消え残りのなさ 4
3.広さ 4
4.チョーク受け、黒板消しなどまわりのきれいさ 5
5.チョークの在庫、色チョークの種類など 4
書きにくい黒板
1.南大阪看護専門学校 最初に教えた学校。情報科学の授業はコンピュータ室での実習および教室での講義だった。教室内の黒板が非常に汚くて、毎回スーツの手首が黄色くなった。
2.滋賀県立大学 公立大学であるためか、メンテナンスが行き届いておらずチョーク受け、黒板消しが汚い。授業時間中に黒板消しクリーナーを動かさなければならなかったのはこの大学だけ。また、色チョークの在庫も少なく、なぜか青や茶色など、使う機会のない色チョークばかり残っている。
3.近畿大学11号館 摩擦力がかなり強い。爪を立てたらとんでもなく恐ろしい音が出そう。文字が書きにくく、一度書いたら消すのがたいへんというやっかいな黒板。掃除は行き届いているが、チョークの補充などのメンテナンスはできていない。研究室から一番近い教室だが、授業をするには不便。この黒板とチョークがあまりにひどいことが、マイチョークを買うことになった直接のきっかけである。
番外編:ホワイトボード
1.神戸大学 広いボード、大量のマーカー。基本的に使いやすいが、ボードクリーナーがちょっと汚れている。マーカーも安いメーカーのものを大量購入しているようで、黒・赤・青しか色がない。しかたないから、生協で自分用のマーカー(黒・赤・青・緑)を購入して使っている。
2.京都精華大学 大教室(100名程度でもあの大学だと大教室扱い)の場合は、太字用のホワイトボードマーカーがあった。小さい教室は移動式ホワイトボードなどしかなく、語学の授業をするにはかなり不便そうだった。
まとめ
そもそも私たちの世代の大学教員のうち、どのくらいがいまも黒板を使っているのだろうか。ここまで書きすすめるうちにだんだん不安になってきた。普段使っている経営学部の21号館には、語学に使う小教室だけでなく、数百人収容できる大教室も多い。大教室での授業ならば、当然黒板を使う先生はいないだろう。なぜなら、後方に座っている学生には普通に書いた黒板の文字など読めないのだから。ということは、講義科目を担当する多くの教員はもはやチョークなど使わず、プリント資料やパワポで授業をしているということだろう。大人数の講義科目だけでなく、昨今はやりのアクティブラーニング型の授業でも、黒板はあまり使われないだろう。教員が一方的に学生に知識を伝授するのではなく、学生と教員または学生同士の共同作業や相互作用のなかで学ぶのが良いとされる最近の状況を考えると、どの黒板が書きやすいとかなんとか未だに言っているのは、まったくもって時代遅れなのかもしれない。しかし、時代遅れならば、何もかも忘れ去られる前に、自分自身が忘れてしまう前に、黒板にチョークで字を書いて授業をやってたころのことを記録しておきたい。